昭和の時代ならさておき、今の時代そしてこれからの時代は、デザインをしようとした時に、「流れに逆らったり」「流れを無視して」デザインするのはNGで、「流れに沿った」デザインをすべきなんだろうってことが感じられるわけで。
言い換えると、素材を活かしたデザインというのか。
自分はどうかというと、それが苦手で。
頭では、現場が大事ってことは重々承知してるのに、苦手。
デザインするためのコンセプトを考えたら(そのコンセプトが現場に合ってるのかどうかはさておき)、それに基づいたデザインしかできず、現場で偶然発見した貴重な素材を逃してしまう感じ。
もし、
見知らぬ土地を歩んでいて、大きな川があったら、どうするんだろう。
これまでの自分なら、シンプルでフォルムがかっこいい鉄橋を作ろうと考えたりするんだろう。
周りには自然が多くて、木で橋を作るべきかもしれないのに。
今の自分なら、それぐらいの周りは見渡せそうな気はする。
でも、"橋で渡る"っていう選択肢以外は持たなかったりするんだろう。
舟を作れば、もしかすると木を一本加工するだけで、渡れるかもしれないのに。
そして、川について調べてみるなんてことは思いもしなかったりするのかもしれない。
幅がひろい川なだけで、すごく浅くて、歩いて難なく渡れるかもしれないのに。
ってな感じで、何をやってるのかよくわからないデザインをしてしまいそうなので、素材を活かす、環境を活かすデザインをしていきたいと、強く思うわけで。
たぶん、いったんリサーチをする前に、自分の中でデザイン案の保険を作っておくからだろうなって思う。人生送りバントで歩いてきたので、保険を作っておくのは得意分野。
その保険が捨てきれずに、頭にしがみついて現場での柔軟な発想に繋がっていかないんだろうな、と。
保険は良いとして、捨てることを恐れずに進まないとな、と。
そんな現場での発想を、より強くするために、エスノグラフィーっていう方法論(?)の本を読んだ。
なぜにもっと早く読まなかったのかと悔やまれる。僕の中ではすこぶる良書。
大学の学部生向けに、すごくわかりやすくエスノグラフィーという現場を調査したり分析したりする方法が書かれている本。
空デ生必須な気がする。そして、なぜにエスノグラフィーを重視して学ぶ課題が無いんだろうか、って思うレベル。
今や超有名なIDEOのデザインプロセスでも、観察は非常に重要視されてるけど、観察を学ぶ機会ってなかなか無いと思うので、書籍であっても知識として得られるのは嬉しい限り。
デザイン作業以外でも、観光や美術館見学なんかでも使ったりして、何か発見していきたいところ。
実践しないと意味ないですしねー。
そんな「エスノグラフィー入門」を読んで、気になったり感じたことのメモ。
- 従来の研究のように、客観性、標準化、数量化を理想化するのではなく、現場の性質を基準にして、それにフィットした方法論を考える。
- エスノグラフィーにはプロダクト(産物)と、プロセス(過程)があり、そのプロセスの部分が方法論である。フィールドワークはこのプロセスの部分に含まれる。
- エスノグラファーは、いわば素材を活かす料理人である。
- 事象と理論を繋げるために必要なのが「概念力」である。具体的なモノ・コトのグループに名前を付けることは概念化である。あるものに名前をつけることで、現実が変化していくこともある。
- ディテールや五感が重要である。
- エスノグラフィーのプロセスには大きく分けて3つの段階がある。調査の現場を探す段階、その現場に入り込んでしばらく滞在する段階、そこから離れて丘の上から眺める段階。
- アートやデザインといったものを観る場合にも、エスノグラフィーを意識すると違ったものが見える気がする。そこから違和感や問いを発見したり、概念力を使ってテーマを見つけるのも良いのかもしれない。
- 「調査」のために見せてもらいたいとお願いすれば、多くの人は許可してくれたりする。
- 目的と説明(メール)→日時決定(電話)→名刺→お礼状、レポート
- 戸惑いから「(主となる)問題」の発見へつながる。つなげる。
- 問題とテーマは違う。
- どれだけの本を先行研究として読んでいるかが、エスノグラフィーを左右する。先行研究には、具体的内容の研究と、抽象的内容の研究がある。慣れてないうちでも少なくとも具体的内容の研究(キーワードの検索からの調査)はすべき。
- 理論や枠にあてはめるのはNG。それらはあくまで道具として使うものである。
- 事例(現場)から、概念化を行い、テーマを決める。テーマと事例をもとに、目的(研究設問)を決める。目的の結論を事例や追加調査で導いていく。